古い文庫本から
古本を整理していたら出てきた一冊の文庫本。カバーの印刷は色落ちしていて傷だらけだけど、何となく読み直してみたら、意外と面白い。いや、面白いと言うか懐かしいようなそれでいて新しい発見があると言うか、こんな感じで何十年も前に読んだ本を読むと、新しい発見があることが最近多いかもしれない。
音楽でも、子どもの頃にはやっていた流行歌が「アラフォー」とかいって、復刻されている。仕事中に聞いてみたりすると、「あぁ、こういう歌だったんだ〜」と、この歳になってやっと詩の解釈が出来たりする。小椋桂なんか当時中学生のお子様が聞いたって殆ど理解できていなかったんだな〜と思う。それでも、それなりに楽しめていたのだから、それはそれで素敵なことなのだけど、歳をとるのもまんざら悪いことではないようだ。
で、文庫本の奥付けを観ると、昭和60年6月10日初版とあるのでこの本は23年前ということになるかな。この作家の原作が何本か映画にもなったし、音楽だと大滝詠一、イラストだと鈴木英人なんかがやたら流行っていて、プールサイドでのんびり読書みたいのが、おしゃれだとおもっていたんだよな〜。
そんな本の中のお気に入りの部分をちょっと紹介します。
その当時の彼女にとって、直属の上司であったスウェーデン人の男性と一緒に夜かなり遅くまで仕事をしたときのことだ。
複雑な仕事がやっと終わり、今日はここまでにしておこうということになって、いつものようにそのスウェーデン人の男性は、オフィスにおいてあるコニャックを、一杯飲みたくなった。
だから、彼女に、コニャックをグラスに注いで持ってきてくれるように、頼んだ。
化粧室で手早く髪のスタイルをなおした彼女は、シャツもとりかえた。髪にあわせて、仕事をおえた夜の時間にふさわしいシャツを着たのだ。
そして、ふたつのグラスに氷をいくつか入れ、そのうえにコニャックを注ぎ、彼のところに持っていった。コニャックはいつもように彼の気持ちをなごませた。
そのコニャック以上に彼をほっとさせたのは、雰囲気を一変させた彼女の髪とシャツだった。
「彼女から学んだこと」片岡義男 角川文庫 から抜粋
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